前回に引き続き、『お客は銀行からもらえ!』の著者、株式会社ネクストフェイズ代表の東川仁氏へのインタビュー後篇です。
参照:「士業集客に「第三のプレイヤー」あり|『お客は銀行からもらえ!』の東川仁氏に聞く(前篇)」
コンサルティング術について
――仕事柄「コンサルティング業務」と切っても切れない関係にある士業は多いと思いますが、よりよいコンサルティングをする上で意識されていることはありますか?
「相手のモチベーションを高めること」です。自分がどれだけいいコンサルティングをしても実際にやってもらわなければ意味がありません。ですので行動してもらうためのモチベーションを高めることを意識しています。
僕は理屈だけいいことを言ってるだけではコンサルタントとしては2流だと思っていて、実際に実行してもらって、かついい結果を出してもらうところまでできれば1流なんじゃないかと思います。
――具体的にどのようなことを実践されているのでしょうか?
コンサルティングをするときは相手に「8割」ほど話してもらって聞く側に回ります。要するに「コーチング」の手法を使うんです。
例えば建設業者の社長さんのコンサルタントをする際、僕と社長さんならどちらが建設に関して詳しいかというとやはり社長さんのほうです。だから僕がどれだけ理屈を並べてみてもそれは机上の空論に過ぎなかったりするんです。
だからまず相手の状況を詳しくお聞きして「いまの状況だとお金も人も足りないですが、これまで切り抜けられたご経験やいい方法をご存知ないですか?」と聞いてみます。すると「ああすればいいかもしれない。こんな手もあるかもしれない」というアイデアが出てきますので、「そのアイデアは実現できそうですか?」とさらに聞きます。そこでできるかもしれないという話になったら、「もし実現できたらどうなりますか?」と話を持っていくんです。すると「儲かるに決まってるじゃないか」ということになりますので「やりましょう!」と背中を押すんですね。
もちろん自分でお気づきになれない場合はこちらから誘導することもありますが、それでも「誘導されている」とは気づかないようにします。大事なのは人は「自分で考えたアイデア」だと思わないとなかなか本気で取り組めないということです。あとは「いつまでにできそうですか?明日進ちょく状況を電話で確認させてもらってもよろしいですか?」とグイグイ実現に向けていくんです。
「オールドタイプ士業」と「ニュータイプ士業」とは?
――本書『お客は銀行からもらえ!』の巻末にて看板を掲げて待っているだけの「オールドタイプ士業」と自ら情報発信をして顧客を獲得していく「ニュータイプ士業」という分類をされていますが、今後この二者はどういう方向に進むのでしょうか?
「オールドタイプ士業」は淘汰されるしかないでしょう。それには「士業従事者の数は増えているが、案件数は減っている」という背景がありますので。今までは営業をかけなくても顧客が取れていた方も、顧客が取れなくなってきたのなら自分から動くしかありません。
また若い士業で、特に行政書士の方などに多いのですがwebで集客しようとされる方は多いです。でも実際にwebで集客するにはメンテナンスを入れたりして、お金も手間もかかりますよね。そうしたノウハウのない人間がwebサイトを構えて漫然と待っていてもなかなか仕事は取れないでしょう。
ただ士業サービスを必要とされている方はたくさんいらっしゃいます。でも顧客へのサービスへの見せ方と顧客へのアプローチがうまくないから、顧客と「出会えない」のです。
――「ニュータイプ士業」は具体的にどのようなアプローチをとっていけばいいのでしょうか?
自分の「強み」を活かすことです。こういうと「私には強みがないんです…」とおっしゃる方がいますが、自分に「強み」ができるまで待つのはキリがないんです。なぜかというと、あるレベルまで到達すると、もっとすごい人っているんですよね。それでその人に対して「この人にはかなわないな」と思い引っ込むことになるんですから。こうなるといつまでたっても自分の「強み」を出せないままですね。
だから「強み」は思いついたら「私の強みはコレです!」とアピールしてしまうことが大事なんです。顧客目線からしても士業側が「強み」をアピールしてくれていないと依頼しにくいんじゃないでしょうか。
――「強み」を考えることは効果的な集客の考え方にも通じそうですね?
顧客には2種類あって「価格訴求型」の顧客と「問題解決訴求型」の顧客があります。例えばwebだと「吹田市 税理士」という検索ワードで税理士を探されている方は「近所の税理士なら誰でもいい」と考えている顧客かもしれません。そうなると「価格の安さ」での競争になってしまいますね(価格訴求型)。
でも「吹田市 相続 税理士」などの検索ワードで調べてくる顧客は「相続問題」を解決したいと考えている顧客なので「相続に強い税理士」を探している問題解決訴求型の顧客ということになります。そこで「なんでもできる税理士」と「相続に強い税理士」が並んだらどちらに依頼したくなるか?というところで自分の「強み」が活きてきます。
Web集客術へのアプローチ法
――士業事務所のホームページはユーザーにどういうコンテンツを見せるべきかというヒントにもなりそうですね?
現在だともう「事務所紹介型」のホームページを作っていても生き残れないでしょう。そうではなく「問題解決型」のホームページを作らないといけないんですね。「問題解決型」のホームページというのは、例えば税務調査が入った方がいるとします。そこに「税務調査が入ったときにするべき3つのこと」という記事があれば思わず読んでしまうわけです。
こうしてホームページ上にその解決策を書いておいて、「もしご自身で解決できない場合はご連絡ください」と最後に書いておくだけでいいんです。
だからwebでの集客では「私は○○に強い」ではダメで、「あなたの抱えている問題はこうすれば解決できます」ということを顧客に「読んで」もらうことが大事だと思います。
――実際に東川さんが運営されているネクストフェイズのホームページも情報量がすごく多いですよね?
そうですね。「情報発信」という意識で運営しています。実際にネクストフェイズのホームページの運営をしているとセミナーの集客で苦労しなくて済んでいます。
――セミナー案件だとwebからの集客の割合はどれくらいでしょうか?
最近はFacebook経由の方が非常に多いです。全体の半分以上でしょうか。Facebookページの運用は最近力を入れ始めたのですが、すでに3,000件ほど「イイね」をいただいてます。直近のセミナーだとDMでの募集には1件の反響がありましたが、残りはすべてFacebook経由の応募者でした。
SNS運営でも重要なのは自分が顧客にしたい「リスト」を集めるということなんです。例えば僕は士業を顧客にしたいわけですが、Facebook上で「銀行に顧客を紹介してもらう方法をまとめた小冊子をプレゼントします」という募集をかけると問い合わせをたくさんいただけますし、こちらはDMなんですが「小規模事業者持続化補助金採択率アップツールをプレゼントします。欲しい方はお問い合わせください」という募集をかけたときは400件ほどの反響をいただきました。
――日々のブログの運営には、どのくらいのリソースを割かれていますか?
1日1時間くらいでしょうか。まずはブログを書いて自分のFacebookページ(https://www.facebook.com/npc.bz)に要約を書いてブログへの導線にしています。それを士業が集まるコミュニティのいくつかにタイムラグをもたせて更新するなどコンテンツの露出のさせ方には工夫をしていますね。
なにより集客で大事なのは「自分が顧客にしたい人はどこにいて、どんな悩みをもっていて、どんな情報を欲しがっているのか?」を考えることだと思います。それはマーケティングの基本でもありますが、僕の場合は「集客に困っている士業さん」をターゲットにしたいので、そのターゲットが「いるところ」に、その人が「欲しい情報」や解決したい悩みの「答え」を提供するということなんです。
――具体的に自分がターゲットにしたい層に関する情報収集はどうされていますか?
本人に聞きます。例えば士業の悩み事が知りたいなら100人ほど集まってもらって直接聞けば答えが出ますよ(笑)。100人の知り合いがいなかったら友だちの友だちなどから輪を広げていけばいいんです。現場で聞くのが一番いいです。
――最後に「お客は銀行からもらえ!」をお読みになった読者の方にひとことお願いします。
僕がいつも書籍にサインを頼まれたときに書く言葉があるんですが、それが「熟考より即動」なんです。3日間考えるなら3回行動起こせるという意味です。
僕はもしかしたら日本一細かい失敗をしてきたコンサルタントかもしれません。でも失敗することでノウハウにもなりますし、コンサルティングの精度も上がってきます。一方で行動して失敗しない限り精度は上がりません。
あとは「失敗を失敗と思わないこと」。失敗すると落ち込みますが、「経験」ととらえて「解決へのいいヒントをもらった」と考えるようにすることも大事です。
【著者紹介】
東川/仁(ひがしかわ じん) 氏
1964年、大阪府に生まれる。株式会社ネクストフェイズ代表取締役、盛繁士業プロデューサー。中小企業診断士、経営コンサルタント。関西大学卒業後、地元の金融機関に入社。2002年、資金調達コンサルタントとして独立。数多くの金融機関に対する研修やコンサルタントも行っており、金融機関の考え方は熟知している。現在は、士業やコンサルタント・FPに対し、「融資に強い専門家」になるための知識やノウハウを伝えるべくセミナーや講座を積極的に行っている。
(※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
株式会社ネクストフェイズHP:http://www.npc.bz/