世間一般では士業による広報活動は難しいと言われています。それは士業の有資格者(市場参加者)が軒並み増加している一方で、提供している「サービス」での差別化が難しい/一般消費者には伝わりにくいというジレンマを抱えているように見えるからです。
しかしサービス内容での差別化が難しいのならば、「広報力」の強弱は士業事務所にとって、他事務所と大きく差別化できる武器にもなりえます。
そこで士業事務所の「広報」をどう考えていけばいいのか?について、かつて司法書士事務所の広報として活躍された【glocal】伊藤孝介氏に解説いただきました。
以下、伊藤氏による解説です。
【1】顧客はなぜあの士業事務所を選ぶのか?
提供しているサービス内容/価格/資金力も大きな差がないはずなのに、あの士業事務所は繁盛していて、自分の事務所はお客さんが来ない。
――この両者の一体どこに差が出たのかというと、それは「広報力」です。
広報をするには多額のお金が必要だと考えていませんか?確かに、テレビCMや電車の中刷り広告、新聞広告などマスメディアを使えば多額の資金が必要になります。しかし、それほどお金をかけなくてもマスメディアに紹介してもらう方法があります。それは「PR」です。
士業事務所の集客にも効果的なPR
「自己PR」、「あの商品をPRする」などよく耳にするPRという単語ですが、正式名称は「パブリックリレーションズ」で、パブリック(公衆)とのリレーション(関係)を良好にしていくための情報発信という考え方です。
一番わかりやすい方法は「プレスリリース」です。プレスリリースはPRのいろはの「い」です。メディアに向けてプレスリリースをすることで、メディアに取り上げてもらうように働きかけるのです。
プレスリリースはワードで文章を打つことができれば誰でも作ることができます。メディアがニュースとして取り上げたくなるような情報を盛り込むことがコツです。
例えば「日本初」「業界初」などの初物や、著名人とのコラボレーション、今ホットな社会問題などを絡めると取り上げてもらいやすくなります。しかも、プレスリリースで出演・取材されたメディアへの出演は基本的に無料です。無料で広報をしてもらえるとなれば、こんなにありがたい話はありません。
(昨年プレスリリースから大手WEBメディアに掲載されたソリトン法律事務所の例)
目指せ!夕方のニュースへの出演
テレビや新聞などのマスメディアに登場することができれば、まずは自社の存在を認知してもらったり、お客さんが困ったときに相談先として選択してもらいやすくなります。マスメディアへの登場は、認知度、関心度を高める絶好の機会です。
最も取り上げてもらいやすいのはローカルニュースです。新聞で言えば地方版、テレビで言えば夕方のニュースです。地元の新オープンのお店の情報や、生産者さん、地域の面白い人などがよく出演していませんか?こうした人たちは、プレスリリースを出していたり、メディアに知り合いがいたりします。さらに一度テレビなどで取り上げられたことによって、次々に取材が入ることもあります。
夕方のニュースなので、サラリーマンなど勤め人は見ることができなかったとしても、専業主婦の奥さんやリタイアした両親が見ていることで、食卓に話題として上がることだってあるのです。
実際に浮気をしていた旦那さんとの離婚調停を考えていた奥さんが相談したのは、ちょうど悩んでいた時にローカルニュースを見て知った弁護士さんだった、なんてこともあります。このようにマスメディアの拡散力、影響力はあなどれません。
【2】イベントでお客さんを掴む!
実際に会ったことがある人というのは、重要な見込み客です。それでは見込み客となりえる人との接点をどのように設けていけばいいのでしょうか?そうした顧客との接点を作るツールの一つとなるのが「イベント」です。
コンテンツ作りは自己分析から
イベントを行う上で最も難しいのが集客です。どんなコンテンツを使ってお客さんの興味・関心を呼び起こすのかがキーポイントになります。しかし「自分にはイベントで使えるコンテンツなんかない」と思われるかもしれません。
そんなときはまず自分自身の分析から始めてみましょう。自分が最も得意とする分野は何か、好きなことは何か、話しやすいことは何かなど、自分自身について見つめ直すことで、コンテンツについてのヒントを得ることができます。
それを軸にイベントの企画を立ち上げたり、誰かが主催しているイベントへの出演営業を行うことができます。
イベントでお客さんを呼び込む方法
前述したように、イベントは集客がキモです。お客さんが集まらないことには何も始まりません。特に弁護士や会計士、司法書士などの士業の先生方が出るイベントというのはどこか難しそうで、本気で困っている人のみがターゲットになりがちです。そのため集客も少人数になってしまいます。
すぐにクライアントになるお客さんも大切ですが、イベントの目的は種まきなので、すぐにクライアントにならなくても、今後お客さんになりそうな見込み客と多く接触することが重要です。
そもそもイベントに集まるお客さんは何を目的としているのでしょうか?もちろん、自分自身の興味・関心からという方もいるでしょうし、単純に面白そうだから、楽しそうだからという方もいるでしょう。
こうした方をより多く集客するための効果的な方法は「コラボレーション」です。異業種の方とコラボレーションして身近な問題をテーマに対談を行ったり、テレビの再現VTRのように劇を挟んでも良いでしょう。まずは面白そうだと思わせる仕掛けを企画に入れ、コラボレーションする相手が持っているお客さんを呼び込むことで、新規顧客の営業となります。
実際に司法書士事務所の広報を担当していた当時、まず司法書士の役割を知ってもらうこと(認知)が課題であったため他業種とのイベントを行うことでPRを図りました。
もちろんイベントで連絡先の書いてあるリーフレットの配布や名刺交換は必須です。
まとめ
新規のクライアントを呼び込む方法として「PR」と「イベント」の2つを紹介しました。現代の人は、興味を持ったことや必要だと感じたことはすぐにインターネットで検索する癖が身についています。つまり「PR」と「イベント」、この2つを行うことは、効果的なホームページへの導線とすることができるでしょう。
著者紹介
【glowcal】 伊藤孝介氏
(略歴)
PR・SP(販売促進)会社に4年勤務。
NPO法人理事や、IT会社役員を経て独立。
【PR・ブランディング実績】
・司法書士事務所のPR
・果樹農家の商品開発と販売戦略、ブランディング
・輸入ワインの販売戦略と販売促進
・酪農家の新規事業のマーケティングと商品開発
・映画のプロデュースと広報戦略
・NPO法人の経営戦略
・アプリ会社経営
・婚活事業
・その他、イベントの運営や集客戦略