前回の記事で(士業の)ワンストップサービスについて、士業なら誰でも知っていることなのですが、世間的にはワンストップサービスは行政手続・OSS・引っ越しの関連用語として認識されているにすぎないということをお伝えしました。
前回の記事はこちら
共同受任・ネットワーク、士業連携のチャンスを掴みとるサイトづくりに必要な4つのこと
では、士業のワンストップサービスというワードやサービスがどのくらい世間的に認知されているのかが個人的に気になったため、ほかの質問も含め、先月、インターネット上でクラウドワーキングサイトに登録されている方、100名にご協力をいただきアンケートを実施しました。
2016年8月実施、士業のワンストップサービスなどアンケート調査の結果
まず、どの士業に依頼をされたことがあるかを尋ねたところ、次の結果となりました。
弁護士…43人
司法書士…25人
税理士…18人
行政書士…8人
土地家屋調査士…3人
社会保険労務士…2人
弁理士…1人
次に、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、海事代理士に何か相談や依頼をしようとして断念したことはありますか?と尋ねたところ、あると答えた方は25人、なしと答えた方は75人で、4人に1人が士業の先生に依頼を試みて断念したことがあると回答しました。
断念したことのある方に理由を尋ねたところ「費用面での意見不一致」「費用が高いから」など費用を理由とした方が14人いました。なかには「貸したお金の回収金額と報酬金額にあまり差がなかったから」「予想していた金額よりも高かったので、断念しました」というやむを得ないケースのほか「料金が不明瞭」「費用が分かりづらい」など報酬面についてより丁寧に説明をしていれば依頼につながったかもしれないケースもありました。
そのほか「弁護士の無料相談で相談してもなかなか良い返事を貰えず、泣き寝入りするしかないのかと思いました」「一度メールで無料相談をしたが、案件が軽かったのか引き受けられないといわれた」という理由で断念された方もいました。
また、弁護士や司法書士、税理士など相談先・依頼先が見つかるまでどのくらい問い合わせをされましたか?と尋ねたところ、1カ所64人、2カ所18人、3カ所10人、4カ所1人、5カ所以上7人と、6割以上の方が最初に問い合わせた・出会った士業の先生に相談・依頼をされていることがわかりました。
そして「この先生・事務所にお願いしよう!相談・依頼の決め手は何でしたか?(複数選択可)」という問いの結果は次のとおりです。
誠実そうだったから…24票
業務に精通していることがわかったから…19票
報酬が予算の範囲内だったから…21票
事務所が近かったから…15票
知人・友人の紹介だったから…46票
その他…14票
その他には「福祉事務所で毎月開催されている弁護士の相談コーナー」「法テラスからの紹介」など公的機関や「職場の顧問司法書士だったので」「職場の顧問弁護士」という顧問業務からの縁、「それまで相談してきた弁護士の先生の中で、唯一具体的にこういう方法があると言って、『良ければ引き受けますよ』と言ってくれたから」と親身になって提案してくれた先生を信じて依頼をしたケースが見受けられました。
知人・友人の紹介46票に、その他で「紹介」と回答した方も含めるとおよそ半数が第三者からの紹介ということになります。
1カ所で決めた方の大半が、もしかすると「紹介」なのかもしれません。
残る半数は、広告宣伝からの集客の可能性が濃厚です。私はオフラインの反響はきびしいことを経験しているため、多くはネットからの集客だと断言します。今回、現実に「携帯で検索したら一番上にその先生が在籍されている法律事務所が出てきたから」という回答もありました。
話は戻りますが、ネットがきっかけで依頼人となった顧客が後にほかの依頼人を紹介してくれることはあるということも断言しておきます。そのためネットでの集客は軽んじることはできません。
今回のアンケートでホームページ上に活かすべきポイントが見えてきた
今回のアンケートの結果を踏まえ、ホームページの改良ポイントが3つあると私は考えました。詳しく見ていきます。
1.報酬面はシンプルにわかりやすく掲示
報酬面で依頼を断念された方のうち予算面での断念はやむを得ないものの、不明瞭・わかりにくさで断念された場合は明らかに受任ロスだといえます。
ホームページ上に報酬額表を出される場合は、誰もが一目見てわかるような報酬設定もしくは表記が必要だといえそうです。
2.検索のトップ表示はいまだに強い
6割以上の方が1カ所で依頼を決めているデータから鑑みると、検索でトップ表示された士業事務所に問い合わせて、そこで依頼が決まってしまうと、2位以下の事務所には問い合わせの電話やメールは来ないという厳しい現実が待っているのかもしれません(あくまでも想像です)。
ゆえに、ネットで集客増を目指す先生方は、日々、SEOの点検対策やコンテンツの充実、スマホフレンドリーはもとより、専門分野への特化など他事務所との差別化を図る必要があると考えます。
3.他士業との連携は明記しておくべき
最後にお伝えすべきことは、今回「士業のワンストップサービス」という言葉を見聞きしたり知っていましたか?という問いに対し「見聞きしたことがあり知っていた」と回答したのはわずか10人で、なんと90人が「見聞きしたこともなく知らない」と回答したという結果が出たということです。
あらかじめ認知度「低」の予測はついていたものの、ここまで低いとは思っていませんでした。
士業のワンストップサービスは、(依頼内容に応じて)他の士業の先生や事務所を紹介、案内をすることです。そのことを知っている方は33人いらっしゃいました。3割以上の方は、この制度?というかサービスを認知しているということになります。
しかしながら、これは士業を頼りたい方々にはとても良い制度だと私は思っていますので、これから、できるだけ多くの方に広く知ってほしいところでもあります。
そこで、可能であれば士業の先生を探されている方に向け、どのような士業と連携があるか、紹介・案内可能であればその旨をホームページ上に記載されることをオススメします。
たしかに「本業の依頼ではなく紹介・案内の問い合わせだけがきても本末転倒だ」という意見もごもっともだと思います。しかし、他士業連携を公にできることは事務所・先生の強みとなります。
最初は連携士業の紹介・案内の問い合わせかもしれませんが、ここで誠実に対応することで、近い将来の本業への紹介・依頼獲得に必ずつながっていくのではないかと思えてなりません。
アンケート調査の概要
今回ITCとして、アンケートを下記の要領で執り行いました。
(1) アンケート方法 インターネット上で4回にわたって実施した
(2) 実施期間 2016年8月12日~26日 100人回答時点で終了
(3) 有効回答数 100人 男性57人 女性43人
(4) 年齢区分
20代…8人
30代…43人
40代…24人
50代…17人
60代以上…8人
(5) 属性区分
会社員…43人
会社役員…1人
学生…4人
公務員…1人
自営業…26人
主婦…15人
団体職員…1人
無職…9人
■著者紹介
ITC代表 石盛丈博氏
(2002年~2010年まで行政書士登録)
まとめ
・依頼人の6割は最初に問い合わせた事務所に決めている
・知人・友人など「紹介」による依頼はおよそ半数
・士業のワンストップサービスのワード認知度は1割、内容認知度は3割以上