5月初旬、行政書士の藤田泰裕先生と仕事上のご縁があり、知り合うことができました。ホームページ上に「メールでのお問い合わせには通常12時間以内に返信する」という旨の記載があるとおりレスポンスが早く、誠実でフットワークの軽い先生だと感じました。
また、先生のサイトには、「悪徳商法対策に強い」「詐欺会社と戦って勝利した経験あり」との記載があり私はこの部分について強く興味を持ちました。
私も行政書士として登録していたときには、望まない契約をされた方々のクーリングオフ・契約解除をさせていただいたことがありました。それから10年近く経ちますが、消費者契約法改正など法整備が進んでいるにもかかわらず、国民生活センターなどのサイトでは今でも悪質業者の手口が載った被害情報が寄せられ、注意を喚起する呼びかけが後を絶ちません。
(グラフは【PIO-NET】相談件数推移[2014年]より引用。ピーク時に比べてやや落ち着いたものの、年間80万件以上もの相談が寄せられている)
そこで今回は、現在の悪質商法についてなど、詳しくお話をお伺いさせていただきました。
(以下、回答は藤田氏。聞き手は石盛)
士業が悪質商法の片棒を担いでしまう可能性とは?
――悪質商法の現状について、今まさに流行している商法や手口、最近の傾向などがありましたら教えてください。
最近は、中小企業支援業務が中心なのですが、私が聞いた話と経験上容易に思いつくのは、やはり「東京オリンピック」「電力自由化」そして「熊本地震」絡みでしょうか。
東京オリンピックでは「競技場の良い席が特別に今から買える」「オリンピック関連会社の社債を買っておけば必ず値上がりして儲かる」などと騙します。
電力自由化では、電気代が安くなると騙してメーターを交換し、お金を取ります。
熊本地震では、義援金と称してお金を騙し取る手口に注意が必要です。
このように、話題のテーマを利用し作り話をして騙すということが多いですね。
そしてこうした悪質業者が士業を利用することもあり、知らず識らずのうちに士業が嘘を信じ込み悪質商法の片棒を担ぐかたちになってしまったケースも残念ながらあります。
――士業の先生が悪質商法の片棒担ぎとは具体的にはどういうことでしょうか?
私が知るケースを2件紹介しますと、1つは、ワンクリック請求業者が弁護士に不当請求の回収業務を依頼し、弁護士が実際に請求を行っていました。
もう1つは投資詐欺業者が批判する人の口封じを図るため、名誉棄損だと主張し、司法書士と弁護士にブログ削除の仮処分などを依頼し、受任した司法書士と弁護士が実際に法律家として仮処分を申し立てたのです。
――後者については士業に携わる人なら誰にでも起こりうることで、他人事ではなさそうです。悪質商法に加担しないためにも知識の研鑽は必須だと思うのですが、そのほかに何か具体的な対策などありますか?
やはり、依頼者の言うことを鵜呑みにせず、最低限の事実関係の確認はするということですね。
弁護士でも行政書士でも「違法行為の助長をしてはいけない」、「事実関係の確認をしなければならない」という規程はあるのですが、これがなかなか難しいところです。
――なぜ難しいのでしょうか?
なにしろ、依頼者を疑うということですから。
具体的な対策として、依頼者のホームページやパンフレット、営業内容を確認します。悪質業者であれば「あれ?変だな」と思う部分が必ず出てきます。
先ほどの2つのケースですと「支払えない場合、わいせつ画像付きのハガキを自宅に送ります」とか「地方自治体や外国政府から正式な公認を受けて協同して事業展開します」などという“えそらごと”が書いてありました。
あと、ネット上の評判も見ます。悪口にとどまらず、被害者が悪質業者の具体的な手口を書き込んでいる場合もありますから。
依頼者の違法行為に気付いたときは、プライドをもって堂々と依頼者を諌め、ダメなら受任を解除するしかありません。
我々士業は、悪質商法に泣く被害者のことを忘れるわけにはいきません。
経営革新等支援機関の専門家としての活動とは?
――話は変わりますが、冒頭で、中小企業支援業務が中心と言われていたとおり、先生は経営革新等支援機関の専門家でもいらっしゃるのですが、具体的にどのような業務をされておられますか?
経営革新等支援機関(認定支援機関)は、国が認定した経営改善アドバイザーで、全国に法人・個人含む約2万5千人しかいない専門家です。
得意分野は人それぞれで、私は、金融・財務やリスク管理の部分を得意としています。
特に力を入れているのが「公的融資支援」です。
日本政策金融公庫や地方公共団体の中小企業育成のための融資制度はたくさんあるのですが、あまり知られていません。また、資金繰りに窮した方のための公的救済制度もあることを知っておけば、自転車操業に陥ったクライアントを救うことができるかもしれません。
うまく資金調達や資金繰りができていない中小企業・個人事業主の方はまだまだ多いように思います。依頼者がこれ以上、無計画な借り入れやその場しのぎの金策をしないよう資金繰り・資金調達の最善方法を助言し、明るい未来に導くのが私の業務です。
そして、中小企業・個人事業主の方が確固たる経営基盤を作れるようお手伝いしていきたいというのが私の願いです。
――藤田先生、本日はありがとうございました。
インタビューを終えて
実を言うと、藤田先生のことを数年前から知っていたという事実に私はあとから気が付きました。行政書士が悪質商法に加担した弁護士を追及する動画をYouTubeで閲覧していた記憶が蘇ったのです。
その勇姿は今でも観ることができますが、まさしく藤田先生でした。当時は、今ほどスマホが多勢を占めておらず民事法務にカメラを導入し記録に残すのは良いアイデアだなと強く印象に残っていました。興味のある方は下記動画をご覧ください。
人物紹介
行政書士 藤田泰裕氏
武蔵野市出身。2009年、かなめ行政書士事務所開業。2015年、AFP登録・経営革新等支援機関認定(関東財務局・関東経済産業局)。座右の銘は「武士は食わねど高楊枝」
■かなめ行政書士事務所HP http://www.kanameoffice.jp/