新規に顧客を獲得しようと考えるとき、新しい方との接点を作る必要があります。それは多くの場合広告であったり、ホームページであったりするのですが、「イベント」も新しい顧客と接点を作るのに有効です。
媒体を介して接点を作る広告に対して、イベントは直接会ったり話したりできるので、接点を持てた方がクライアントになりやすいというメリットがあります。
そこで本稿では「士業イベントはどのように作っていけば良いのか?」について、その具体的な流れを順にご説明していきます。
【1】士業イベントの出発点~どこから始める?
●士業イベントの核(目的、テーマ、ターゲット)を作る
イベントを開催するためにはまず、どのような内容にするのか企画を行うことが最初の課題です。士業イベントも同様で、企画を作る際には以下のことを決めていかなくてはいけません。
- 目的(何のためにイベントを行うのか?)
- テーマ(何を行うイベントか?)
- ターゲット(来場してくれるお客さんは誰か?)
最初に決めたいのは、「目的」です。士業の方であれば、トークイベントであったり、パネルディカッションであったり、講演会であったり、研修であったりが考えられます。こうした方法を通して何を実現したいのか?が重要です。もちろん、「新規顧客の獲得」というストレートなものでも構いません。何のためにイベントを行うのか、という目的が企画を作る上で柱となっていきます。
次に「テーマ」を考えます。つまり、来場者に対して「何を提供するのか」ということです。弁護士、司法書士の方であれば、自身が持つ法律の知識であったり、体験であったりを提供できるでしょう。それを提供することによって、来場者にどんなメリットがあるのかも考える必要があります。法律の知識を得てもらうことで生活が豊かになるというのもメリットの一つですし、また単純に裁判所とはどんな場所なのか、これまでにどんなユニークな依頼があったのかなど単純にエンターテイメントとして楽しんでもらうことも考えられます。
これらを考えていくときに誰に来てもらいたいのかという「ターゲット」設定は欠かせません。失敗するイベントによく見られるのは、このターゲットの設定があいまいで、「とにかく多くの人に来て欲しい」と考え老若男女誰にでも呼びかけてしまいます。イベントを1000人2000人もの規模で考えているのではないとしたら、もっとターゲットを絞っていくべきです。どんな人が御社のお客さんになり得るのでしょうか?
ここまでで、何を目的として、どんなテーマで、どんな人を集めたいかというイベントの柱が決まってきます。この柱こそがイベントの核であり、根底です。最終的に目指すべき方向性が見えてきたところで具体的な内容を立案していきます。
●イベントの企画作成
イベントの核が決まったら、そこに肉付けをしていくのが企画立案です。核となる情報の中には誰(ターゲット)に何を伝えたいのかが含まれていますよね。そこで考えるのは「どうやったら伝わるのか」「どうしたら興味を持ってもらえるのか」という点です。
例えば「女子大生」に「会計の大切さ」を伝えたいと考えた場合、単純に専門家を集めてトークディスカッションを繰り広げただけでは、ターゲットはイベントに参加してくれないでしょう。そこに、自分(女子大生)との接点が見当たらないからです。「女子大生」と「会計」に接点をまず見つけることが最初の課題となります。すると、一人暮らしをする際にかかる生活費が接点になるかもしれません。すでに一人暮らしをしている人ではなく、これから一人暮らしをしたいと考えている人に「会計」の大切さを伝えるという方向性も考えられます。
「一人暮らしをするための会計術」というテーマを設けた場合、会計だけではどうも引きが弱い。そう感じた場合、コラボレーションを考えると良いでしょう。
●コラボレーション企画
弁護士、司法書士、会計士、税理士などの士業はどうしても「堅い」イメージが先行してしまう業種です。そのため士業中心にイベントを立ち上げると、ただただ真面目な内容になってしまい、単純に「面白さ」が欠けてしまいがちです。そこで、異業種とコラボレーションすることで、士業にないものを補ってもらおうというわけです。
コラボレーションをするときは、企画段階から相手に声をかけて一緒に作り出す形がオススメです。初期段階から関わってもらうことで、役割分担してイベントの運営ができること、パートナー企業からの集客が見込めることがメリットとなります。声をかけてコラボレーションを持ち掛ける際は、現時点で考えているアイディアをシェアするところから始めましょう。
●需要はあるのか
企画を作る上で、最も重要なことはそこに「需要」があるのかということです。誰にも必要とされていないイベントを実施したところで、ただの自己満足にしかなりません。ターゲットに設定した人に必要とされている内容なのかどうか再度振り返ってみましょう。需要に関しては、ターゲット何人かにヒアリングしたり、新聞や雑誌など情報をインプットすることで確認することができます。
【2】士業イベントに不可欠な具体的条件
●会場はどこにするのか
企画のイメージがある程度まとまってきたら、具体的な中身について決めていく必要があります。中でも重要なのが開催会場です。会場を決める際のポイントは大きく分類すると、
- 会場キャパシティ
- 会場経費
- アクセス
以上3点です。
キャパシティは集客しようと考えている人数、または実際に集客の見込みのある人数によってセレクトします。小さすぎると人が溢れてしまいますし、大きすぎると寂しいイベントの印象になってしまいます。
また会場を使う際にかかる経費は最も大切な要素です。予算や、入場料の設定にも関わってくるからです。
さらに会場までのアクセスは集客に大きく影響を及ぼします。駅から近い、道がわかりやすいなど、アクセスが便利なほうが当然人も集まりやすくなります。
会場の確保は、管理している企業や団体に電話で連絡し、空いているスケジュールを確認しましょう。
●イベント参加費はどうするか
会場が決まったら、次は入場料を取るのか取らないかを決めます。イベントを行うことを「新規顧客の獲得」のための広告活動であると考え、無料にするという選択肢もありますし、参加者にきちんと価値を与えられる場合には、価値分の対価として入場料を設定することもあります。イベントを開催するためにかかってくる経費、提供する価値を総合的に判断して参加費を設定しましょう。
●いつ開催するのか
イベントを行うときに大切なものの一つにスケジュールがあります。スケジュールは集客に大きな影響を与える重要な項目です。週末の昼間に集まってくれる人と平日の昼間に集まってくれる人は異なります。ターゲットに設定した人たちが集まりやすい日時、そしてイベントの準備が整うタイミングを調整して決定するのが望ましいでしょう。
【3】イベントの集客方法と下準備
●ターゲットに合わせた集客方法を
イベントを行う際、参加者を募集することは必要不可欠です。どのような方法で集客を行えばよいのかが頭の悩ませどころです。まず、どのような告知方法があるのかを知ることが必要です。テレビ、新聞、雑誌などのマス広告は、影響力も大きいですが、その分高額な費用がかかります。
最近ではインターネットも主流です。マス広告程ではありませんが、こちらも費用がかかることは覚悟しておく必要があるでしょう。チラシの作成という方法もあります。チラシは基本的な集客方法です。ポイントは作成したチラシをどのように配布するかという問題です。新聞の折り込みやポスティング、DM発送などの方法があります。フェイスブックやツイッターといったSNSでの告知もあります。
問題はどの方法を採用するかです。告知方法を採用するにあたって考える材料となるのが、「ターゲットは誰か」という点と「予算」です。チラシを作るにもマス広告を打つにも費用がかかります。集客を行うにあたってどのくらいの費用をかけることができるのかはとても大切な要素です。その上で、ターゲットに対して一番接点が持てそうな手法を採択するのです。
ターゲットが高齢者であれば、インターネットやSNSでの告知は効果が薄いことが容易に想像できます。むしろ、自宅に直接届くポスティングや新聞折り込みのほうが効果が高いでしょう。一方、若者がターゲットの場合、契約者が少ないであろう新聞よりもインターネットやSNSでの拡散が効果的です。
●問い合わせ先はどこにするのか
集客のための施策を行う場合、重要なのは問い合わせ先です。チラシや広告を見て参加表明をしたり、不明な点を質問する際の連絡先を設ける必要があるでしょう。事務所に対応可能な人材がいればそれで良いのですが、自分一人しかいない場合は、問い合わせ対応のみでかなり大変な業務になってしまうことも考えられるため、外注もしくは知り合いにお願いすることが必要です。そうしないと、イベントの準備はおろか、本業のほうにも影響が出てしまうこともあります。
●準備するもの
イベントを開催する際に、準備物をチェックしておきましょう。トークをする際のマイクや、資料を映し出すプロジェクター、来場者に渡すための資料、必要であれば看板なども用意することが考えられます。さらに、会場のテーブルと椅子、受付用にも必要になるでしょう。お金を扱う場合はお釣りの小銭や領収書、予約制の場合は予約者名簿も準備が必要です。
その他、企画内容に応じて準備するものリストを作成し、当日不足品がないようにチェックしていきましょう。
●イベント当日の流れ
イベント当日は、開場するよりも最低1〜2時間は早く到着し、準備の最終チェックを行います。開場設営、受付の準備、マイクや音響に問題はないか、資料は揃っているのか、プロジェクターの位置や動作について問題はないか確認します。様々な点検をするのを一人で行うのは相当に大変です。そのため、担当を設けてそれぞれにお願いするのが定石です。最後に各担当者からの準備完了の報告を受け、来場者を待ちます。不足の事態に備え、時間に余裕を持って来場者を待つことが望ましいでしょう。
そしてイベントが終了したら、撤収作業も必要です。会場を借りる際には撤収作業の時間も考慮して申請が必要です。後日、イベントについての反省を行い、次回に向けてまた企画を練っていくという流れになります。
おわりに
早足ではありましたが、イベントを作る流れについていかがでしょうか。もちろん実際にイベントを開催しようと思ったら、決めていかねばならない細かな点が発生します。しかし、一度開催してしまえば、おおよその流れが体感でき、不足していた部分は反省して次回に活かすことができます。まずは小さい規模でも良いので自身で士業イベントを作り出してみることが大切です。ぜひチャレンジしてみてください。
著者紹介
【glowcal】 伊藤孝介氏
(略歴)
PR・SP(販売促進)会社に4年勤務。
NPO法人理事や、IT会社役員を経て独立。
【PR・ブランディング実績】
・司法書士事務所のPR
・果樹農家の商品開発と販売戦略、ブランディング
・輸入ワインの販売戦略と販売促進
・酪農家の新規事業のマーケティングと商品開発
・映画のプロデュースと広報戦略
・NPO法人の経営戦略
・アプリ会社経営
・婚活事業
・その他、イベントの運営や集客戦略